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知らないと大変!相続不動産売却と税金・・・と国保料!?

こんにちは。弁護士の前田牧です。

今回は、相続した不動産を売却するときに注意しておきたい税金と国保料、一部負担金について解説します。

 

ご親族が亡くなってご自宅などの不動産を相続するということは身近に起こりうることかと思います。

このとき、相続人のどなたも不動産は要らないということになれば、この不動産を売って、売れたお金を分けましょうということになります。

 

こういう場合、不動産を売ろうとすると、仲介に入る不動産屋さんや場合によっては買い手さんが、複数の相続人が売り手のままになっていることを嫌がることがあります。

そんなときにどうするかというと、複数いる相続人のうちの1人の名義にして、形式上はその1人が売り手となり、不動産を売却します。

確かにそうした方が、手続き的にはすっきりしますね。

売れたお金(売却益)を相続人みんなで分ければ問題ないように思えます。

例えば、親が亡くなって、相続人がその子ども3人(きょうだい)のA、B、Cだったとして、不動産の名義をとりあえずAとして売り、売却益をA、B、Cで分けることにする、ということです。

 

しかし、ちょっと待ってください。

相続した不動産を売った場合には、譲渡所得税がかかります(諸条件によりかからない場合はありますが、原則かかります)。所得が上がるので翌年の住民税も上がります。これは、形式上名義人になっているAだけに課税されます。

しかし、売却益を分けてしまったあとで、Aだけが課税されるとAが割りを食ってしまうことになります。

そうならないためには、税金分を考えてAが予め多めに受け取る、税金分は分けずにプールしておく、後から税金分をB、Cに返してもらう、といった対策が考えられます。

ここまでは、おそらく多くの方が予測して対処していることかと思います。

ところが問題はこれで終わりではありません。

Aが国民健康保険加入者であった場合、所得が上がったことにより、翌年の国保料が上がります。

国保料の上がり方はハンパないです。国保料が高いことで悪名高い福岡市を見てみますと、年収500万円の場合は年間約51万円ですが、これが年収1000万円になると約98万円になります。月額8万2500円!(2020年度、40歳〜64歳)

年収が1000万円になったなら、保険料も倍になっていいじゃないかとお思いかもしれませんが、上記のAの場合ですと、元の年収が500万円、相続した不動産の売却益が500万円、それをBとCとで分けるので、Aの取り分は約166万円、税金を引くと、130万円程度が増加したに過ぎません。130万円の所得増に対して、50万円近くの保険料増になるわけです。

 

そして問題はさらに続きます。

国保の窓口負担金(平たく言えば病院代)は3割負担ですが、高額の負担金を支払った場合には、高額療養費の還付申請ができます。

しかし、ここにも所得による負担増が!

福岡市の場合ですと、年収が500万円の場合は、1か月で約8万円を超えた分が高額療養費として戻ってきますが、これが年収1000万円(上記のAのケース)ですと、1か月で約25万円を超えないと高額療養費として戻ってきません。1か月で25万円です。何か月も通院していたらどうなるでしょうか。

 

他の相続人と仲が良ければ、「こんなことになるとは知らなかった。保険料の一部を負担して欲しい。」と言えば負担してもらえるかもしれませんが、相続人同士が仲が良いとは限らないのが世の常です。後からはなかなか言い出せないことも多いでしょう。

こうならないために、不動産を売却する際には、その後の税金と保険料について、話合っておくことが重要です。

 

なお、私が病院で働いていた頃は、高齢者の窓口負担金は通院の場合は1回500円(月に4回まで)、入院は1日1000円でした。それより前は負担金はなかったのです。したがって、お若い方はともかく、高齢者の窓口負担金が高額になることなどおよそありえなかった時代があったわけで、こういった問題もあまり生じなかったのだろうと思います。

医療制度の改悪が(あえて改悪と言わせていただきますが)、めぐりめぐって相続問題を複雑にし、ひいては弁護士業務を煩雑にしているという一例でした。

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