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こんにちは、弁護士の前田です。アスベスト問題解説第3回です。
今回は、3つのタイプのアスベストの裁判について解説します。
泉南型
一つは、アスベスト製品の製造や加工など、アスベストを取り扱った工場で勤務していた方が国に対して損害賠償請求をする裁判です。大阪の泉南地域での被害についての大規模な裁判があったことから、「泉南タイプ」などと言われます。
このタイプの裁判は、すでに最高裁判決が出ていますので、そのスキームを使って国を訴えることになります。
もともと泉南地域の被害者がなぜ国を訴えたかというと、その地域は日本中から多くのアスベストが集まる一大集積地だったのですが、中小零細企業がほとんどでしたので、健康障害が発生した今となってはその会社がなくなっているという事態があったからなのです。
それに、元はといえは、国がアスベストの危険性をわかっていながら使用を禁止せず放置してきたことが、被害発生の大元なのですから、国が責任を取ることを求めたわけです。
最高裁判所は、危険性がわかっていながら放置した国の責任を認め、損害賠償義務があるとの判決を言い渡しました。
もっとも、この判決で損賠賠償を受けることができるのは裁判を起こした原告だけですので、同じような被害に遭った方は、別途訴訟を起こす必要があります。
なお国はその方に生じた損害の全部を賠償する訳ではありません。足りない分は企業に請求することになります。
建設型
もう一つは、建設現場でアスベストを含む建材を取り扱ったことで健康障害を起こした方が国や建材のメーカーを訴えるタイプの訴訟です。これは「建設タイプ」と言われます。
このタイプの裁判は、現在日本各地で集団訴訟が行われています。集団訴訟というのは、複数の人が原告になって、裁判を起こすというものです。
なぜ国や建材メーカーを相手にしているのかといいますと、建設作業に従事する方は多くの場合、何十年もの間に数えきれない現場で作業に従事していて、どこでアスベストに暴露したのか、どの企業の現場で暴露したのかがわからないことが大きいからなのです。
それに、元はと言えば国がアスベストの危険性を知りながら建材として使うように推進してきたことが被害が大発生した元凶ですから、国と、それから危険な建材を売り続けたメーカーに責任を負ってもらおうと言っているわけです。
このタイプの裁判は、まだ一度も最高裁の判決が出ていません。地方裁判所や高等裁判所の判決の内容は様々です。
ですから、国や建材メーカーの責任がどうあるべきかについての考え方がまだ固まっていない状況です。
そういうこともあり、国にこのタイプの被害の責任を問う場合には、お一人で個別の裁判を起こして勝訴するのはなかなか難しい状況にあると思います。各地の集団訴訟に参加するのが被害救済への近道でしょう。
個別企業型
どこでアスベストに暴露したか、責任を負うべき企業はどこかがはっきりわかっている場合で、その企業が今も存在している(そして損害賠償をするだけの経済力がある)場合には、泉南型や建設型のように国を相手にする必要はありません。
この場合は個別にその企業を相手にして損害賠償の請求をすることになります。
ただしこのタイプでは、企業ごと、現場ごとに「どのようにしてアスベストに暴露したか」「どうすれば暴露しなかったか」の事情が違ってきますので、そこを証明していく必要があります。
そのため、同僚の方や事情を知っている方がいると心強いかと思います。
アスベストについてのブログ第4回は、建設アスベスト訴訟をもう少し詳しく解説する予定です