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4月5日、東京で行われた過労死弁護団全国連絡会議総会に出席してまいりました。
「KAROSHI」が国際的に認知されて20年以上が経っていますが、いまだに過労死として労災認定されるケースは後を断ちません。
厚生労働省によれば、2012年度の脳・心臓疾患に関する事案(過労死を含む)の労災補償請求件数は842件、支給決定数は338件、精神障害に関する事案(過労自殺を含む)の労災補償請求件数は1257件、支給決定数は475件だったそうです。
また、警察庁によれば2012年の自殺(自死)者2万7858名のうち、原因動機が「勤務問題」であった件数は2472名だったとのことです。
このような中、昨年12月に野党6党の共同提案で「過労死防止基本法案」が衆議院に提出され、現在「過労死防止対策推進法」の名称で自民党ワーキンググループで議論されており、近いうちに成立する見込みです。
過労死防止対策推進法の最終ワーキンググループ案を見ますと、
第一条に
この法律は、近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労死等に関する調査及び研究その他の過労死等の防止のための対策の推進を図り、もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的とする
と規定され、
また、その他の条文では「国の責務等」「過労死等の防止のための対策に関する大綱」などが盛り込まれています。
野党案であった「基本法」ではなく「調査・対策推進法」になっているのは不満の残るところですが、それでもかなり当初の法案に近いものとなっています。
ところで、昨今話題の雇用規制緩和は、この過労死防止対策とはどのような関係に立つのでしょうか?
一方で過労死防止をうたい、他方で規制緩和するのは矛盾しているように思えます・・・。
産業競争力会議民間議員である三木谷浩志氏は
「ベンチャー企業なんかでは、スタートアップ期には週7日、24時間体制で頑張っています。それが従業員保護の名目で規制がかけられている。最低限のセーフティーネットは必要ですが、もっと現実にあった形にかえていかないと、日本企業の競争力はますます落ちていきますよ。」(文藝春秋2013年4月号)
と仰っていますが、これ、過労死防止対策推進法の理念とは真っ向からぶつかる見解だと思うのです。
長時間労働に関する規制緩和(ホワイトカラーエグゼプションのようなもの)が議論されていますが、長時間労働が過労死など重篤な疾患を生じさせることはすでに明らかになっていて、労災の認定基準も明確に打ち出されています。
それなのにあえて規制緩和に踏み切って過労死が発生した場合、国の責任は問われないのでしょうか?
産業競争力も大事ですが、働く人がそれなりに健康でなければ企業はうまく動きません。ヒト・モノ・カネは経営資源なのです。そう、人は資源なのです。
せめてモノ・カネ並みに大事にしてほしいと思うのです。
“ストップ!過労死”実行委員会 (ネット署名もまだまだ受付中)
http://www.stopkaroshi.net/index.html
(弁護士 前田 牧)