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前回の「核兵器禁止条約って何?-第1回-」の続きです。
さて日本はどうかといいますと、政府は、日本は唯一の戦争被曝国であり、政府は核兵器禁止条約が目指す核兵器廃絶という目標を共有していますというものの、日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要であり、核兵器禁止条約に参加すると米国の抑止力の正当性を失い、国民の生命・財産を危険にさらすことを容認することになりかねない、として、条約に参加しない態度を示しています。(外務省ウェブサイト2021年2月時点)
ここでは「抑止力」が重視されているわけですが、実は核兵器禁止条約はこういった「核抑止論」から考えるのではなく、核兵器が禁止されるべきかどうかを「法」から考えようというアプローチなのです。
ここでいう「法」とは国際人道法の一つであるジュネーブ諸条約第一議定書を指しています。
この議定書では、たとえ戦争の中であっても守るべきとされているルールが明らかにされていて、その中には、過度の傷害または不必要な苦痛をもたらす兵器の使用を禁止することや、自然環境に対して広範、長期かつ重大な損害を生じさせる手段を禁止すること、軍事目標と民間人を区別すること、無差別攻撃を行わないことなどが明らかにされています。
実際に、この国際人道法からのアプローチにより、対人地雷やクラスター爆弾も条約によって禁止されています。
少し身近な問題に置き換えると、「抑止論」からのアプローチとは、例えば「あの人が銃を持っているから、私も持たなくてはやられる」「私が銃を持つことで、あの人が銃を使うことを抑えられる」というのを前提に、「みんなで少しずつ銃を持つ量を減らしていきましょう」ということですが、国際人道法からのアプローチは「銃は人の命を容易に奪ってしまう危険なものなので、使うことを禁止しましょう」というものに近いのではないかと思います。
抑止論からだけのアプローチだと、国と国とのパワーバランスに影響されてしまい、中々話が前に進まないのです。
ここで国際人道法からの視点を入れることで、核軍縮が進むことが期待されています。日本が条約に参加するのであれば、唯一の戦争被曝国の参加として国際的に大きなインパクトを与えるでしょう。
(弁護士 前田)