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差し押さえた不動産、その後どうなるの?

先日、現在放送中のドラマ「半沢直樹」を見ました。

第2回目は瞬間最高視聴率24%だとか。すごい視聴率ですね。

このドラマは、主人公の半沢直樹(銀行の融資課長)が、西大阪スチールなる会社に無担保で5億円を融資したものの、西大阪スチールが数か月で倒産してしまい、なんとか回収しようと奔走するお話しです。

前回は半沢さん、西大阪スチールが持っているハワイの不動産を発見し、不動産価格の5000万円を回収!やったー!…かと思いきや、国税局に横取りされたでござるという内容でした。

ところでこのお話し、不動産競売や配当の知識がなければちょっと難しいかも…ということで、その辺の解説を少し。

 

題して

「差し押さえた不動産、その後どうなるの?」です。

 

不動産強制競売(いわゆる「本差し」)

貸したお金を返して貰えなかったり、商品代金を払って貰えなかったり、損害賠償金を払って貰えなかったり…つまり「お金を払って貰えない」場合には、裁判所に「●●円を支払え」という判決を求めることができます。

でも世の中には裁判所が「●●円を支払え」と言っても、債務者が知らん顔して払おうとしないとか、債務者に払うだけのお金がないというケースがあります。

こういう場合には、債務者の財産を差し押さえて強制的に支払わせるわけです。差し押さえられる財産としては、現金などの動産のほか、預金、不動産、債権などがあります。

今回半沢さんが差し押さえようとしたのは不動産ですね。

 

不動産仮差押命令(いわゆる「仮差し」)

ところで、裁判所に「●●円を支払え」という判決を出してもらおうと思ったら、どんなに早くても数か月かかります。

その間に債務者は、財産を隠してしまうかもしれません。不動産であれば売り払ってお金に換えられてしまったら、どこにあるのかわからなくなります。

そこで、「●●円を支払え」という裁判を起こす前に、財産を差し押さえてしまって、隠したり、売ったりできないようにしておきます。これを仮差し押えといいます。

この仮差押命令を出してくださいというのも裁判所に申し立てるんですが、この命令は数か月も待たされずにすぐに出ます。のんびりしてると、債務者の財産が無くなってしまうかもしれませんからね。

今回半沢さんの銀行の法務部長が作っていたのは、「不動産仮差押命令申立書」ですね。

 

競売&配当

さて、いよいよ不動産競売となった場合にはどうなるのでしょう。

不動産の競売は、裁判所が行います。

要は裁判所が不動産屋さんになったようなもんです。

競売手続きの詳細は省略しますが、めでたく売却されて不動産の代金が支払われたとします。

今回の半沢さんのケースでは、5000万円くらいになる予定だったようですね。

では、もし半沢さんの仮差しが成功していたとしたら、この5000万円はすべて半沢さんの銀行が受け取れるのでしょうか?

いえいえ、そんなに世の中甘くはありません。

なんと裁判所は、「西大阪スチールの不動産を競売しますよ。代金が欲しい債権者はほかにいる?」と公表しちゃうのです。

そうすると、ほかの債権者たちが続々と名乗りをあげてきます。これを配当要求といいます。ドラマで言えば、赤井英和さんの会社も配当要求するでしょう。そしてもちろん、国税局も配当を要求します。(税金の場合は交付要求といいます。)

 

配当の順番

そしてここからがミソですが、回収したお金を配当する順番や割合は、きっちり法律で決まっているのです。

先に差し押さえた人に、優先的に配当されるわけではないのです!

配当の順番は大まかに言うと、

1番 国税、地方税などの税金

2番 先取特権などの担保がついている債権

3番 その他

となっています。

(ややこしくなるので抵当権は省略しています。これは本当に大まかな説明なので、詳しく正確に知りたい方は、関連の本を読んでください。)

 

で、半沢さんの債権は…3番の「その他」です。一番弱い立場ですね。

そして今回のライバル国税局の税金は…1番です。

なので、例え5000万円で売却されても、その金額以上の国税があれば、半沢さんの銀行には1円も配当されないわけです。

それで、半沢さんは、国税局の人に不動産を発見されないように頑張っていたのですね。

 

ちなみに、国税は、最初に説明した「仮差し押え→判決→競売」という三段階を踏まずに、いきなり「競売」という手続きをすることができます。

ちなみにのちなみに、破産しても税金は払わなければいけません。

何人も逃れられないもののたとえで、「死と税金」なんて言いますが、本当に税金は怖いです。

 

ところで、赤井英和さんの債権も、3番の「その他」に入ります。「その他」の債権者に対しては、債権額に応じて平等に配当が行われますので、例え国税がなかったとしても、赤井さんの会社が1億円の債権を持っていたら、半沢さんお銀行とは5:1になりますから、5000万円の6分の1は赤井さんが受け取ることになります。

法律は「早い者勝ち」をさせないように出来ているのです。

もし「早い者勝ち」がまかり通るなら、「あの会社が危ない」という噂がでたとたん、債権者が押し寄せて財産を持って行ってしまうでしょう。

裁判所がきちんと配当するから、穏便にやってくださいねという仕組みになっているのです。

(だからドラマでも、本当は西大阪スチールの破産手続きによる配当を待つべきで、半沢さんの銀行が抜け駆け的に債権回収をするのはどうかと(ごにょごにょ)…そういうことを言いだすとドラマを楽しめないので、この辺でやめておきます。)

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