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こんにちは、弁護士の前田です。
アスベスト問題解説、第2回です。
今回は、泉南アスベスト訴訟について解説をします。
2006年5月、アスベストの一大集積地であった大阪泉南地域のアスベスト被害について、石綿工場の元従業員やその家族、近隣住民が国に対して損害賠償請求をする裁判を大阪地方裁判所に提起しました(一陣訴訟)。
3年後の2009年には、さらに多くの方が原告になって裁判を提起しました(二陣訴訟)。
提訴4年後の2010年、一陣訴訟の大阪地裁判決が言い渡されましたが、これは、工場内でアスベスト粉塵に曝露されることについて、対策を取らなかった国の責任を認めた初めての判決となりました。
しかし、この裁判の控訴審では国の責任を認めないという内容になり、原告が逆転敗訴となってしまったのです。
一審は、労働大臣(現・厚生労働大臣)は、適時適切に規制権限を行使しなければならないことを前提に、工場内で作業する労働者が石綿粉じんに曝露しないような措置を義務付けなければならなかったのに、これをしなかったことが違法であると判断しました。
これに対して控訴審では、規制ばかりしていては新しい技術が使えないこともあるので、どんな規制をするかは専門的な裁量になることを前提に、著しく裁量を逸脱していないと違法にならないとしたのです。
一審と控訴審で判断が真逆になっていましたが、2014年10月9日、最高裁は一審の判断と同様、労働大臣の責任を認め、1958年以降には、工場内で作業する労働者が石綿粉じんに曝露しないよう、局所排気装置(換気装置)の設置を義務付けなければならなかったという内容の判決を言い渡したのです。
この判決によって国の責任が確定したので、裁判の原告になっていなかった方についても、要件に該当する場合には、国は損害賠償金を支払うようになりました。
損害賠償を受けるには、別途裁判を起こす必要があります。
次回は、現在行われているアスベストの裁判にどういったタイプのものがあるかをお話します。